本人に最適化されたSNPアレイ「ジャポニカアレイ®」を設計〜約66万個のSNP情報を搭載した個別化予防・医療研究を加速する解析ツール〜【プレスリリース】

東北大学東北メディカル・メガバンク機構ゲノム解析部門の長﨑正朗教授、河合洋介講師らは、日本人集団のもつSNPを全ゲノム領域を網羅し高精度で取得できる、日本人に最適化されたSNPアレイ「ジャポニカアレイ®」の設計に世界で初めて成功しました。
ジャポニカアレイ®の設計は、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査に協力した1,070人分の全ゲノム情報を活用し、独自のSNP選択アルゴリズムを開発・実装してスーパーコンピュータ上で解析することで実現されました。
遺伝子型インピュテーション(以下、インピュテーション)技術を用いることで約66万個のSNPを搭載したジャポニカアレイ®から最大2,000万SNPを取得可能です。
ジャポニカアレイ®は既存の同等数のSNPが搭載されているアレイと比べてインピュテーションの精度が10%以上向上し、また、3倍以上の数のSNPが搭載されている既存のSNPアレイとほぼ同等またはそれ以上の性能を発揮します。
この研究は、日本人に固有な体質・疾患の関連遺伝子を大規模に探索研究する為の基盤解析ツールであり、日本人の個別化予防・医療研究を加速する重要な成果です。本研究成果の詳細は、2015年6月25日(英国時間)Journal of Human Genetics誌のオンライン版で公開されました。
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【論文名】
Yosuke Kawai, Takahiro Mimori, Kaname Kojima, Naoki Nariai, Inaho Danjoh, Rumiko Saito, Jun Yasuda, Masayuki Yamamoto, Masao Nagasaki
Japonica Array: Improved genotype imputation by designing a population-specific SNP array with 1,070 Japanese individuals
「ジャポニカアレイ®:1,070人の日本人の情報に基づく日本人集団に適したSNPアレイの設計によるインピュテーションの改良」
掲載予定誌:Journal of Human Genetics

また、今回の発表にあわせて、研究者の興味のあるSNPが搭載されているかを評価できるようにジャポニカアレイ®に搭載されているSNPのリストについて一般公開を開始しました。
さらに、ジャポニカアレイ®を用いて未搭載のSNPがどの程度の精度でインピュテーション可能かについて問合わせを行うことができるポータルサイトを公開しました。
ジャポニカアレイ®は、株式会社 東芝へのライセンスのもと、一般にジェノタイピングサービスの提供が行われています。

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第61回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(4月16日)

第61回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は東京大学大学院新領域創成科学研究科・小林一三先生を講師としてお迎えし、「エピジェネティクス駆動進化:細菌種内複数系列でのOMICS比較による実証」について講演していただきます。

・日時:平成27年4月16日(木) 10:00‐11:00
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題:エピジェネティクス駆動進化:細菌種内複数系列でのOMICS比較による実証
・講師:小林 一三(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

・概要:適応進化についての 「多様なゲノム配列からの選択」という考え方と対照的に、進化の単位を「エピゲノム状態」とする考え方が現れている。エピゲノム状態が直接次世代に伝えられる細菌で、その証拠を得た。細菌のDNAメチル化酵素の多くは、同じ配列を認識する制限酵素と制限修飾系を作る。それらは、「非自己」エピゲノムを破壊する「利己的な」エピジェネティックス系である。制限修飾系を排除した細胞を染色体切断によって排除することによって、特定のメチローム状態をホスト細菌に強制する。私達は、細菌種内複数系統のゲノム配列比較、メチローム比較、トランスクリプトーム比較 によって、制限修飾系が、頻繁に認識配列を変換し、メチロームを多様に作り替え、遺伝子発現パターンと様々な形質を変えることを実証した。 それら制限修飾系の内外環境による制御、真核生物の脱メチル化酵素と同様に塩基を切り出すタイプの制限酵素、メタゲノム解析で使われるrRNA遺伝子の崩壊と変貌についても紹介し、マイクロバイオームのミクロ進化をどう捉えていくかを考察したい。

・世話人:黒木陽子、長﨑正朗

第59回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(3月13日)

第59回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は統計数理研究所・間野修平先生を講師としてお迎えし、「Approximate Bayesian Computationとその応用」について講演していただきます。

・日時:平成27年3月13日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題: Approximate Bayesian Computationとその応用
・講師:間野 修平(統計数理研究所数理・推論研究系)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

・概要:複雑なモデルに基づくベイズ的データ解析は、特にデータの大規模化に伴い、計算機性能の限界から、数値的といえども厳密に行うことは難しくなります。外れ値の解析のように、データの規模を生かした記述的方法を用いるのも一法ですが、モデルに基づく推測を欠かせない問題もあります。Approximate Bayesian Computationは、モデルの尤度を明示的に得られないけれども、シミュレートはできることを想定し、厳密性を計算可能な範囲で妥協したベイズ的データ解析の方法です。モデルに基づく一方、要約統計量の構成はアルゴリズム的に行われますので、データのモデリングと機械学習が融合されていることが、方法論としての面白味と思います。 本講演では、背景、理論的基礎と方法、実問題への適用の可能性についてお話させていただきます。

・世話人:河合洋介、長﨑正朗

第58回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(3月6日)

第58回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は東京大学先端科学技術研究センター・辻真吾先生を講師としてお迎えし、「生命科学分野におけるデータ解析の実際と未来」について講演していただきます。

・日時:平成27年3月6日(金) 16:00‐17:30
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題:生命科学分野におけるデータ解析の実際と未来
・講師:辻 真吾(東京大学先端科学技術研究センター)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

・概要:本セミナーでは、私個人の研究成果や経験を中心にして、今後、Computational biologyの分野が進むべき方向性を皆様と一緒に考えて行きたい。話題は多岐にわたるが、次のような内容を予定している。機械学習アルゴリズムを使った予測の例として、Random forests法を使った抗がん剤の効果予測について紹介する。がんのmulti-omicsデータ解析の事例としては、大腸癌における遺伝子発現データとDNAメチル化データの解析と、Deep Learningを使った11種類のがんのmulti-omicsデータの解析事例を紹介する。生物学的知識の表現方法の1つとして、ネットワークが使われることは多いが、こうしたネットワークからの知識の抽出方法についても議論したい。最後に、ゲノム情報が医療やヘルスケア産業に応用されつつある現状を踏まえ、Computational biology分野の社会的な責任についても考慮してみたい。

・世話人:成相直樹、長﨑正朗

第57回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(2月27日)

第57回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は大阪大学産業科学研究所・杉山 麿人先生を講師としてお迎えし、「統計的に有意な構造をビッグデータから発見する」について講演していただきます。

・日時:平成27年2月27日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題:統計的に有意な構造をビッグデータから発見する
・講師:杉山 麿人(大阪大学 産業科学研究所 知能推論研究分野)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

・概要:ビッグデータからの知識発見を目的とするデータマイニングは、化学や生物学などの基礎科学から経営やマーケティングへの応用に至るまで幅広い分野で活用されている。特に、共起して発現する遺伝子の組み合わせや、特定の活性をもつ化合物が共有している構造などデータに潜む組み合わせ的構造を発見するための手法の開発は、データマイニングにおける中心的課題である。ところが、発見された知識の統計的な有意性の担保、すなわちP値の計算は生命科学をはじめとするデータマイニングの主要な応用領域では必須の要請であるにも関わらず、長く重要視されてこなかった。本講演では、2013年にPNASで発表された寺田らの論文をきっかけに現在急速に研究が進んでいるこの問題への取り組みについて紹介する。特に、データマイニングの分野で発達した超高速アルゴリズムと、統計の分野で発達した多重検定法を融合することで、この問題の解決を可能にする最新の成果について紹介する。

・世話人:三森隆広、長崎正朗

第56回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(2月13日)

第56回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は九州大学大学院理学研究院・手島康介先生を講師としてお迎えし、「集団遺伝とcoalescent理論」について講演していただきます。

・日時:平成27年2月13日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題:集団遺伝とcoalescent理論
・講師:手島 康介(九州大学大学院理学研究院)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

・概要:ゲノム多様性データから生物の進化的変化を推定することは(特に進化に興味を持つ)多くの研究者の注目するところである。なお、ここで進化的変化とは非常に長い進化的タイムスケールにおける生物の変化のことを指すものとする。集団遺伝はゲノム多様性データから進化的変化を推定する時の理論的解析枠組として有効に働くものと考えられる。本セミナーではまず集団遺伝学における進化プロセスの捉え方と基礎的な解析手法について簡単に紹介する。その後、近年の集団遺伝学的解析において良く用いられているcoalescent理論について概説を行なう。coalescent理論は近年の計算機を用いたベイズ推定の発展とも相まって、主に進化パラメータの推定などに使われている。さらにcoalescent理論を用いた例として、法医学分野におけるY染色体ハプロタイプの一致確率に関する考察した事例と、重複遺伝子の進化プロセスをcoalescentを用いて考察した事例の二点について紹介する。

・世話人:河合洋介、長﨑正朗

第55回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(2月6日)

第55回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・岡田随象先生を講師としてお迎えし、「遺伝統計解析による疾患病態解明、新規創薬、疫学への挑戦」について講演していただきます。

・日時:平成27年2月6日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題:遺伝統計解析による疾患病態解明、新規創薬、疫学への挑戦
・講師:岡田 随象(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

・概要:遺伝統計学とは、生物における遺伝情報と形質情報との結びつきを、統計解析を通じて明らかにする研究分野である。ヒトゲノム配列が解読されてから10年が経過し、数千人~数十万人規模のサンプルにおける遺伝情報が得られる時代が到来した。これらの膨大な遺伝情報に対する大規模ヒトゲノム解析を通じて、多数のヒト疾患の発症に関わる遺伝子が同定されてきた。また、得られた疾患関連遺伝子を多彩な生物学・医学データベースや創薬ターゲット遺伝子群と横断的に照合する遺伝統計解析により、新たな疾患病態の解明や、ドラッグ・リポジショニングを通じた新規創薬に貢献できることが明らかになりつつある。特定の疾患の組み合わせにおける合併率の変化など、疫学研究が指摘した疑問点の解決に向けて、遺伝統計解析の側面からのアプローチも行われている。本セミナーでは、様々なヒト疾患を対象に我々が行ってきた遺伝統計解析の成果を紹介すると共に、ヒトゲノム解析の今後の展望について述べたい。

・世話人:山口由美、長﨑正朗

第54回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(1月30日)

第54回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は東京大学大学院医学系研究科・西岡将基先生を講師としてお迎えし、「脳機能の多様性をもたらすゲノム・アーキテクチャーの探索:LINE1を中心に」について講演していただきます。

・日時:平成27年1月30日(金) 16:00‐17:30
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題:脳機能の多様性をもたらすゲノム・アーキテクチャーの探索:LINE1を中心に
・講師:西岡将基(東京大学大学院医学系研究科 精神医学分野)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

・概要:多様な脳機能を遺伝子という観点から理解しようと、精神疾患をはじめとした遺伝学的研究が盛んに行われている。特定の遺伝子多型・変異と精神機能との関連が多数報告されているが、概ね低いオッズ比・浸透率であり、多くの遺伝子が複雑に関連するものと考えられている。我々は、個体レベルの遺伝子多型・変異に加えて、脳の発生過程において生じた体細胞変異が、精神疾患の発症など脳機能の多様性に寄与しているのではないかと考えており、ヒト脳における体細胞変異の解析を進めている。中でもレトロトランスポゾンLINE1に注目している。  方法としては、1)全ゲノム配列解析データからLINE1の配列を抽出し、新規挿入かつ臓器(細胞種)特異的なものを同定するin silicoの方法、2)自律活性を持つL1Hsに特異的なプライマーを用いたTAIL-PCRと次世代シークエンサーにて挿入位置決定する方法(L1Hs-seq)を用いている。現在進めている予備的検討の結果を報告し、データの解釈とともに、脳における体細胞変異の解析の今後の展開と精神疾患との関連について議論したい。

・世話人:佐藤行人、長﨑正朗

リトリート大学院生研究発表会にて博士課程1年の吉田裕司がポスター研究奨励賞を受賞

1月17日に開催された第8回リトリート大学院生研究発表会にて、博士課程1年の吉田裕司がポスター研究奨励賞を受賞しました。
発表内容はミトコンドリア変異検出法の開発と評価に関する研究で、4月からの成果と今後の展望をまとめたもので、研究の将来性が評価されての受賞でした。


吉田裕司 博士課程1年

第53回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(1月9日)

第53回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は自然科学研究機構基礎生物学研究所・柴田朋子先生を講師としてお迎えし、「少量DNAからの1分子シークエンシングによる新規ゲノム解析法の開発」について講演していただきます。

・日時:平成27年1月9日(金) 9:00‐10:15
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階小会議室2
・演題:少量DNAからの1分子シークエンシングによる新規ゲノム解析法の開発
・講師:柴田朋子(自然科学研究機構基礎生物学研究所)

・概要:1分子シークエンサー、PacBio RSIIは、可読配列長が平均7−8 kb、最長30 kbと長く、シークエンシングの過程でPCRによる増幅を行わずに塩基配列を決定することが可能である。そのため、増幅されにくい領域や長い繰り返し配列などが読めるようになり、より精緻なゲノム解析が可能となった。しかし、増幅を必要としない反面、解析には大量のDNAが必要となり、生物によっては必要量のDNAを確保できない場合も多い。そこで我々は、バイアスを生じずにDNAを増幅できるとされるPhi29 DNA polymeraseを用いて増幅したDNAについてPacBioによるシークエンシングを行い、少量DNAから新規ゲノム解析を可能にする方法の開発を行った。本セミナーでは、この方法で得られた細菌ゲノム及び真核生物ゲノムのデータの解析結果について紹介し、今後の展望を議論する。

・世話人:長﨑正朗