当研究室で開発を行った研究がプレスリリースとして発表されました。
【発表のポイント】
・東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)は、3,554人の全ゲノムリファレンスパネル(3.5KJPN)を作成し、約3,710万個の一塩基変異(SNVs)を収載することに成功しました。同SNVsの72%以上にあたる約2,690万個が、世界各地のSNVsを登録する国際データベースには存在しません。集団(民族集団など)が保有するSNVsの多くは集団ごとに特徴的なことが知られていることから、3.5KJPNには日本人に特徴的なSNVsが多数収載されていることが明らかになりました。今後、3.5KJPNは日本人を対象とするゲノム医療に大きく貢献することが期待されます。
・3.5KJPNの約32%は宮城県と岩手県以外の検体から構成されています。詳細に検討すると、日本列島内の地域集団の微細な違いは確認されるものの、他のアジア集団のゲノム情報とは、大きく、かつ明確に異なる日本列島出身者としてのまとまりが検出されました。これらのことから、これまでToMMoが開発してきたリファレンスパネル(1KJPN、2KJPN)が日本人の特徴を幅広く反映するものであることが実証されました。合わせて、3.5KJPNは日本全国の地域集団の特徴を更に詳細に反映していることも明らかになりました。
・3.5KJPNは、日本人の持つ0.03%以上のSNVsをカバーするものと考えられます。ToMMoとIMMは本パネルに含まれるすべてのSNVsの位置情報、アレル頻度情報及びアレル数情報を近日中に公開します。これらの情報により、現在日本医療研究開発機構(AMED)が実施中の、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)事業における疾患候補遺伝子の絞り込み性能のさらなる向上が見込まれます。また、疾患への罹患リスク推定などの目的で利用されるマイクロアレイ解析での全ゲノム復元性能を向上させることも可能になります。このように3.5KJPN全ゲノムリファレンスパネルは本邦におけるゲノム医療の研究基盤として大いに活用されるものと期待されます。
【概要】
ToMMoとIMMは、東北メディカル・メガバンク計画が宮城県と岩手県で実施するコホート調査への協力者3,344人、および国立病院機構長崎医療センターにおける協力者181人、ながはま0次予防コホート事業への協力者29人(日本人一般住民合計3,554人分)の全ゲノム塩基配列を解析し、精度検証を進めることで、日本人の全ゲノムリファレンスパネル(3.5KJPN)を作成することに成功しました。
3,554人分のDNA情報を次世代シークエンサーで読み取り、のべ約329兆塩基もの高品質な全ゲノム断片配列情報を解読し、スーパーコンピュータによる情報解析技術と他の手法による実験結果による検証とを組み合わせることで、最終的に信頼度の高い約3,710万箇所のSNVsを同パネルに収載しました。同SNVsの72%以上にあたる約2,690万箇所は世界各地のSNVsを登録する国際データベースに報告されていない新規のSNVsでした。3.5KJPNは、日本人の持つ0.03%以上のSNVsをカバーするものと考えられます。
集団(民族集団など)が保有するSNVsの多くは集団ごとに特徴的なことが知られていることから、3.5KJPNは日本人に特徴的なSNVsが多数収載されていることが明らかになりました。今後、3.5KJPNは日本人を対象とするゲノム医療へ大きく貢献することが期待されます。
3.5KJPNの約32%は宮城県と岩手県以外の検体から構成されており、詳細に検討すると日本列島内の地域集団の微細な違いは確認されるものの、他のアジア人の集団のゲノム情報とは、大きく、かつ明確に異なる日本列島出身者としてのまとまりが検出されました。これらのことから、これまでToMMoが開発してきたリファレンスパネル(1KJPN、2KJPN)が日本人の特徴を反映していることも明らかになりました。合わせて、3.5KJPNは日本全国の地域集団の特徴を更に幅広く反映しています。
東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災の被災地等で健康調査を行い、被災地の健康状態の改善と遺伝要因・環境要因を考慮した次世代型医療・予防の確立を目指したもので、事業の実施は、ToMMoとIMMとが連携して行っています。
【公開予定】
本成果について、平成27年度より、本計画の研究支援機関であるAMEDのデータシェアリング方針のもとに、当計画における解析結果は速やかに研究者コミュニティに共有することとしており、本リファレンスパネルによるSNVsの位置情報、アレル頻度情報及びアレル数情報は、ToMMoの専用ウェブサイトiJGVD(integrative Japanese Genome Variation Database)で間もなく公開されます。
東北メディカル・メガバンク機構ウェブサイト(2017.07.20)より抜粋