原発性胆汁性胆管炎のゲノムワイド関連解析- 国際メタ解析による新規疾患感受性遺伝子と治療薬候補の同定-【プレスリリース】

当研究室で行った研究がプレスリリース発表されました。

長﨑正朗 学際融合教育研究推進センター特定教授、Gervais Olivier 同研究員(研究当時)、中村稔 長崎大学教授らの研究グループ(日本人PBC-GWAS consortium)とGeorge Mells イギリス・ケンブリッジ大学博士のグループ(UK-PBC consortium)は、「PBC-GWAS国際共同研究(参加国:イギリス、イタリア、カナダ、米国、中国、日本)」に登録された原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis:PBC)患者 10,516症例とコントロール 20,772例のゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study:GWAS)データを用いて国際メタ解析を実施し、新規疾患感受性遺伝子領域21ヵ所を含む計60ヶ所のPBC疾患感受性遺伝子領域を同定することに成功しました。

新たに同定された21ヵ所の疾患感受性遺伝子座の中には、FCRL3、INAVA、PRDM1、IRF7、CCR6などの免疫反応に重要な役割をもつ遺伝子が多数含まれており、PBCの発症に様々な免疫担当細胞(樹状細胞、マクロファージ、T細胞、B細胞)の活性・分化経路が関与していることがあらためて示されました。また、疾患感受性遺伝子領域には異なる集団(人種)間において一致率約70%とある程度の相違はあるものの、PBC発症に関わる遺伝子構造や疾患発症経路は異なる集団間で共通しており、TLR-TNF signaling、JAK-STAT signaling細胞のTFH,TH1,TH17,TREG細胞への分化経路やB細胞の形質細胞への分化経路がPBCの発症に重要であることが明らかとなりました。

また、これらのGWAS情報を用いたin silico drug efficacy screeningにより、既存の薬物の中からPBC治療への再利用が期待される薬物候補として、免疫療法薬(i.e. Ustekinumab,Abatacept,Denosumab)、レチノイド(i.e. Acitretin)、フィブラート(i.e. bezafibrate)などが同定されました。一方、PBC治療の第一選択薬として広く使用されているウルソデオキシコール酸は、このスクリーニング方法では薬物候補としては選択されず、GWASの結果から推定される上記疾患発症経路とは異なる経路上の標的に作用している可能性が示唆されました。

本研究成果は、2021年5月21日に、国際学術誌「Journal of Hepatology」に掲載されました。→An international genome-wide meta-analysis of primary biliary cholangitis: novel risk loci and candidate drugs.

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長﨑教授がAWS Public Sector Summit Onlineにて招待講演を行いました(2021年4月16日)

4月16日(金)‌長﨑教授がAWS Public Sector Summit Onlineにて招待講演を行いました。

AWS Public Sector Summit Online
・日時:令和3年4月15日(木)-16日(金)
・場所:オンライン
・セッション:I run complex AWS workloads
・講演タイトル:Accelerate the pace of research with Kyoto University
・言語:英語

AWS Public Sector Summit Online April 15-16, 2021

セッションはオンデマンド配信されます。
Breakout Sessions>I run complex AWS workloads> Accelerate the pace of research with Kyoto University

原発性胆汁性胆管炎の新たな遺伝要因を同定 ーヒト全ゲノム領域へのRHM法による世界初の成果―【プレスリリース】

当研究室で行った研究がプレスリリース発表されました。

京都大学学際融合教育研究推進センター スーパーグローバルコース医学生命系ユニットの長﨑正朗 特定教授、Gervais Olivier研究員(研究当時)、国立国際医療研究センター ゲノム医科学プロジェクト 戸山プロジェクト長 徳永 勝士らのグループは、長崎大学大学院医歯薬総合研究科教授/国立病院機構長崎医療センター客員研究員の中村稔らのグループが世界規模で臨床研究を進めている、原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis; PBC)(合計1,953人)の日本人遺伝子データベースと日本人の一般集団の全ゲノムデータベース(合計3,690人)との比較を行いました。

その結果、日本人では今まで報告がない3箇所の新規領域を含む、合計7箇所の染色体上の疾患に関わる候補領域を、ほとんどヒトゲノム情報に適用されたことがないポリジェニック効果を考慮した手法、領域内遺伝率推定法(Regional Heritability Mapping法; RHM)による、ゲノム解析から同定しました。

また、再現性を確認するため、3か所の新規染色体対象領域に含まれるSNP(一塩基多型)のうち、統計量が一番有意であったSNPについて、前述の集団とは独立したPBC患者(合計220人)と、京都府立医科大学 大学院医学研究科 上田 真由美特任准教授から提供された一般集団の全ゲノム情報(合計271人)との間で遺伝型の頻度に有意差があるか解析を行いました。その結果、日本人では今まで報告がない3箇所の遺伝子領域(STAT4(注4)、ULK4(注5)、KCNH5(注6)) いずれについても疾患に関係することを再確認できました。

さらに、これら3か所の遺伝子のうち特に海外でも報告例がないULK4とKCNH5について、PBCの患者由来の遺伝子と非罹患群の遺伝子のトランスクリプトーム発現量を比較ました。その結果、ULK4を含む領域についてPBC罹患群で発現上昇していることを見出しました。

RHM法をヒト全ゲノム解析に適用することで新規の遺伝要因を同定したこと、独立した集団を用いてRHM法で同定された遺伝要因の再検証をする一連のスキームを確立したこと双方の成果が世界初になります。同手法は、PBC疾患以外の多因子疾患にも幅広く適用可能であり、今後さまざまな疾患にも適用することで一般的なゲノム情報解析手法では見逃されていた遺伝要因を新たに同定できると期待しています。

本研究は、科学雑誌「European Journal of Human Genetics」オンライン版(9日付:日本時間2021年4月9日)に掲載されました。→Regional heritability mapping identifies several novel loci (STAT4, ULK4, and KCNH5) for primary biliary cholangitis in the Japanese population

研究のポイント

  • 日本人遺伝子データベース(PBC罹患群と一般集団)を比較解析し日本人のPBC(primary biliary cholangitis)疾患に関わる3つの新規遺伝子候補領域(STAT4,ULK4,KCNH5)を同定
  • 同ゲノム解析に、領域内遺伝率推定法(Regional Heritability Mapping; RHM)法を活用
  • 独立した日本人遺伝子データベース(PBC罹患群と一般集団)を比較解析し3か所の再現性を検証
  • PBC罹患群と非罹患群との間でULK4とKCNH5の肝臓における遺伝子発現量を比較し、ULK4遺伝子がPBC罹患群で発現上昇することを確認
  • RHM法をヒト全ゲノム解析に適用し新規の遺伝要因を同定したこと、および、独立した集団に対しRHM法で同定された遺伝要因を検証する一連のスキームを確立したこと双方が世界初
  • 今後、同手法は幅広く新規の遺伝要因の探索に適用可能

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がん免疫総合研究センターによる緊急シンポジウムがオンライン開催されます(2020年10月5日)

10月5日に、京都大学医学研究科 がん免疫総合研究センターによる緊急シンポジウム
『新型コロナウイルス感染対策におけるPCR検査の利点と課題』~感染制御と社会経済を両立した健康で豊かな社会を取り戻すために~
がオンライン開催されます。

開催日時: 2020年10月5日 17時~19時 【zoomオンライン】

申込締切:2020年9月30日(水)

参加定員:500名(先着順)定員に達し次第締め切りのこと。

PCR検査の実施による感染制御の効果、検査規模を拡大するうえでの課題など…。国民の健康で豊かな社会を取り戻すという観点から、新型コロナウイルスの感染対策のための本質的な議論がパネルディスカッション形式で行われる予定です。

京都大学医学研究科附属 がん免疫総合研究センターNewsページ

※ 終了いたしました。

長﨑教授が第3回日本循環器学会基礎研究フォーラム(BCVR2019)にて招待講演を行いました(9月8日)

9月8日長﨑教授が第3回日本循環器学会基礎研究フォーラム(BCVR2019)にて招待講演を行いました。

・日時:令和元年9月8日(日)シンポジウム 10:10~10:25
・場所:東京コンベンションホール
・セッション&テーマ:Genomics in Cardiology
・講演タイトル:Development and application of biomedical methods to facilitate the detection of disease-causing variants based on whole genome data from Japanese
・言語:英語

第3回日本循環器学会基礎研究フォーラム

長﨑教授がGenomeExpo2019にて招待講演を行いました(8月28日)

8月28日(水)長﨑教授がGenome Expo 2019にて招待講演を行いました。

・日時:令和元年8月28日(水)招待講演 10:30~11:00
・場所:U110, Engineering Bldg. 4, UNIST, Ulsan, Korea
・セッション&テーマ:International Symposium on Human Genomics
・講演タイトル:Genome cohort projects in Japan and biomedical analyses toward the discoveries of disease-causing variants
・言語:英語

GenomeExpo2019

 

長﨑教授とオリビエ博士がESHG 2019に参加発表しました(6月15日‐17日)

6月15日(土)‐17日(月)長﨑教授とオリビエ博士がESHG 2019(European Human Genetics Conference)に参加発表しました。

・日時:令和元年6月15日(土)‐17日(月)
・場所:Gothenburg, Sweden
・ポスタータイトル:HLA-VBSeq v2: enhancements of HLA genotyping accuracy from WGS data with full-length Japanese HLA sequences
・言語:英語

ESHG2019

(12月14日)第84回インシリコ・メガバンク研究会、東芝共同研究量子暗号通信セミナー、セキュリティセミナー合同開催

第84回インシリコ・メガバンク研究会、東芝共同研究量子暗号通信セミナー、セキュリティセミナーを下記のとおり合同で開催しますのでご案内いたします。

・日時:平成29年12月14日(木) 18:00-19:30
・場所:東北メディカル・メガバンク棟3階大会議室
・プログラム
1. 共同研究の進捗説明 長崎正朗教授

2. 講師:佐々木雅英先生(国立研究開発法人 情報通信研究機構)
演題:量子暗号技術を用いた超長期セキュア秘密分散保管システム
概要:ゲノム情報や個人の生命に関わる医療情報が複数の家系や複数の世代に関わる情報であり、万が一漏洩すれば取り返しのつかない事態を招くため、世紀単位の超長期間にわたって機密性(情報が漏れないこと)と完全性(データが改ざんされないこと)を保証する必要がある。しかし、現代暗号のみでは、将来の安全性の危殆化を完全に防ぐことができないため超長期の機密性・完全性の確保は不可能である。一方、量子暗号という技術と秘密分散というプロトコルをうまく組み合わせることにより、どんな計算機でも解読できず、災害等で一部エリアのサーバが損しても原本データを正しく復元できる秘密分散保管システムを実現することができる。情報通信研究機構では、現在、医療機関の協力を得て、超長期セキュア秘密分散保管システムの研究開発に取り組んでいる。本セミナーでは、量子暗号の仕組みを解説し、秘密分散保管システムの概要と取り組みの現状、今後の展望について紹介する。

3. 講師:佐藤英昭研究主幹(株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター)
演題:東芝の量子暗号通信技術と東北大学との共同研究概要 
概要:量子暗号通信は、究極の安全性を実現する暗号通信システムで、将来にわたって通信データを解読できない暗号通信を実現することが可能です。 東芝では、英国の東芝欧州研究所ケンブリッジ研究所で開発した量子暗号通信技術の実用化に向けた取組みを進めており、ゲノム解析データの送信実験を東北大学との共同研究として2015年から実施しています。本講演では、共同研究成果の概要と量子暗号通信装置の最新の研究開発状況をご説明するとともに、量子暗号通信を活用したシステムの将来構想についても言及します。

4. セキュリティの重要性 高井貴子准教授 

5. 閉会の挨拶 長神風二特任教授  

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。 

世話人:長神風二、高井貴子、長﨑正朗