第42 回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(12月13日)

第42回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。
今回は国立遺伝学研究所・野澤昌文先生を講師としてお迎えし、「種間比較から遺伝子量補償機構の進化を探る」というタイトルで講演していただきます。

・日時:平成25年12月13日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1
・演題:種間比較から遺伝子量補償機構の進化を探る
・講師:野澤昌文(国立遺伝学研究所 生命情報研究センター)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

概要:性染色体の進化は、一対の常染色体に性決定遺伝子や性拮抗遺伝子が集まることから始まる。性を維持するためにはこれらの遺伝子は連鎖している必要があり、X‐Y染色体間の組換えは抑制される。それに伴い、Y染色体には自然選択が作用しにくくなるため、突然変異や転移因子が蓄積し、Y染色体の多くの遺伝子がその機能を失う。その結果、オスにはX染色体上の遺伝子が1コピーしかなくなるため、雌雄間および染色体間で遺伝子量の不均衡が生じる。この不均衡は異型性染色体が進化する上で選択的に不利であると考えられるので、この不均衡を解消する分子機構として「遺伝子量補償」という概念が提唱された。実際、多くの研究からヒトをはじめとする多くの生物でその存在が示唆されている。しかし、これらの結論の多くは遺伝子発現量が雌雄間や染色体間で等しいという結果に基づいており、性染色体の進化過程を考慮した形での議論はほとんどなされていない。そこで私は、最近性染色体が生じたウスグロショウジョウバエのX染色体とその近縁種の相同常染色体の遺伝子発現を比較することで、遺伝子量補償の進化過程を探ろうと試みている。本発表では、これまでに得られた知見を紹介するとともに、今後の展望についても述べてみたい。

世話人:佐藤行人、長﨑正朗

第41 回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(12月10日)

第41回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。
今回は統計数理研究所・西山悠先生を講師としてお迎えし、「最近のカーネル法として正定値カーネルを使ったベイズ推論の話題」について講演していただきます。

・日時:平成25年12月10日(火) 17:00‐18:30
・場所:医学部1号館2階 中会議室
・演題:最近のカーネル法として正定値カーネルを使ったベイズ推論の話題
・講師:西山悠(統計数理研究所)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

概要:近年のカーネル法では、正定値カーネルを使ったベイズ推論(カーネルベイズ推論)が研究されている。この方法論は、確率分布の代わりに確率分布を一意に定めるようなカーネル平均を推論していくものである。カーネル平均は,確率分布の通常の平均ではなく、特徴空間での平均で定義される。周辺化操作に使われる「和公式(sum rule)」や、ベイズ事後分布を求める「ベイズ則(Bayes’ rule)」について、いずれもカーネル化された「カーネル和公式」、「カーネルベイズ則」を紹介する。これらを組み合わせて、状態空間モデルのフィルタリングや強化学習アルゴリズムが導かれる。最近発表者らが行っている確率モデルを組み合わせたカーネルベイズ推論についても紹介する。

世話人:小島要、長﨑正朗

 

第40 回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(12月6日)

第40回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は統計数理研究所・小森理先生を講師としてお迎えし、「一般化t統計量の漸近的性質の考察とその実データ解析への応用」について講演していただきます。

・日時:平成25年12月6日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1
・演題:一般化t統計量の漸近的性質の考察とその実データ解析への応用
・講師:小森理(統計数理研究所)

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

概要:高次元データの解析において臨床医療またはさまざまな病気の診断に有効な変量(マーカー)の探索は近年ますます重要になってきている。遺伝子発現量のデータのような高次元の連続量のデータ解析においては、t統計量やc統計量(AUC)などが変数絞り込みの段階でしばしば用いられる。今回我々はこの検定統計量の一つであるt統計量に着目し、単変量ではなく多変量の線形結合を考えることでこのt統計量を判別問題に応用することを考える。t統計量に対し生成関数であるU関数を考えることにより、さまざまなt統計量の一般化が考察できる。 一つの結果としてt統計量、c統計量(AUC)、Fisher線形判別、Kullback-Leibler divergenceとの密接な関係が明らかになった。またこの手法の実データへの応用例として一般化t統計量にL1ペナルティをつけたLassoタイプの手法を提案する。この手法の一つの特徴として、あらかじめ有用であることが分かっている変量(発症リスクに関連が深い変量)を固定したうえでその他の変数の選択ができる点があげられる。シミュレーションと実データ解析においてその有用性を検証する。また将来的にはSNPのような離散的なデータに対しても適用可能な統計的手法を考えて行きたい。

世話人:田宮元、長﨑正朗

第39 回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(11月15日)

第39回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。
今回は筑波大学・大橋順先生を講師としてお迎えし、「HLA遺伝子領域の特殊性とHLA関連解析」について講演していただきます。

・日時:平成25年11月15日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1

*本講演は医学系研究科系統講義コース科目の授業として振替可能です。

概要:HLA(ヒト白血球抗;Human Leukocyte Antigen)の主な機能は、T細胞への自己および非自己(病原体)由来の抗原を提示することである。古典的HLA分子にはクラスI分子とクラスII分子があり、それらHLA分子をコードするHLA遺伝子群は、第6染色体の短腕部6p21.3に位置している。HLA遺伝子領域の特徴として、ヒトゲノムの中で最も高度な多型性をしめすこと、数Mbにおよぶ強い連鎖不平衡が観察されること、ハプロタイプによって遺伝子数に違いがあること、様々な疾患に対する感受性と関連する多型が存在すること、などが挙げられる。本発表では、HLA遺伝子領域の連鎖不平衡を理解するうえで重要な自然選択の役割について、日本人集団でDPB1*04:01アリルに最近作用した正の自然選択を例に解説する。また、私どもが熱帯熱マラリア患者を対象に行ってきたHLA遺伝子の関連研究についても紹介したい。

世話人:田宮元、長﨑正朗

第38回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(11月8日)

第38回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。
今回は科学技術振興機構・川嶋実苗先生を講師としてお迎えし、「NBDCヒトデータベース:ヒトデータ共有ガイドラインとヒトデータ提供・利用申請の紹介」というタイトルで講演していただきます。

・日時:平成25年11月8日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1
・演題:NBDCヒトデータベース:ヒトデータ共有ガイドラインとヒトデータ提供・利用申請の紹介 ・講師:川嶋実苗(科学技術振興機構・バイオサイエンスデータベースセンター)

要旨:ヒトに関して取得される生命科学データは、次世代シークエンサーデータや画像データをはじめ、解析技術の発達に伴って膨大な量になりつつある。それらを整理・格納して、生命科学の進展のために有効に活用するためのルールや仕組みが必要である。独立行政法人科学技術振興機構(JST)バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)では、個人情報の保護に配慮しつつ、ヒトに関するデータの共有や利用を推進するためにヒトデータに関する様々なデータベース等を共有するためのプラットフォーム『NBDCヒトデータベース』を設立するとともに、国立遺伝学研究所 DNA Data Bank of Japan (DDBJ)と協力してヒトに関するデータの公開を進めている。また、その運用ルールとしての『NBDCヒトデータ共有ガイドライン』および『NBDCヒトデータ取扱いセキュリティガイドライン』を策定し公開した。
共有ガイドラインを遵守してデータ共有を行なう上でのポイント、および、データ提供申請や利用申請における必要書類と具体的な申請方法について紹介する。

世話人: 田宮 元、長﨑 正朗

第36回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(10月18日)

第36回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。
今回は産業技術総合研究所・清水佳奈先生を講師としてお迎えし、「秘密計算によるデータベース検索」について講演していただきます。

・日時:平成25年10 月18 日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1 http://www.megabank.tohoku.ac.jp/info/access01.html
・演題:秘密計算によるデータベース検索 ―ゲノムデータベースへの応用を目指して―
・講師:清水佳奈(産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター)

・要旨:近年,DNAシークエンシングのコストが大幅に下がり,個人レベルでゲノムデータを取得することが可能となった.しかしながら,個人情報を含むゲノムのプライバシ保護と自由度の高い情報解析を両立させることは非常に難しいため,現状では,莫大な費用と労力を投じて得られた豊富なデータを十分に活用できていない.一方で,計算機科学の分野では,データそのものを暗号化し,さらに暗号化した状態で中身を見ることなく情報解析を行う秘密計算技術の研究が進展している.本講演では,我々が開発した秘密計算によるデータベース検索技術を紹介し,ゲノムデータベースへの応用について議論したい。

世話人: 荻島創一

第35回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(10月16日)

第35回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は宮城県警科捜研・平田智士氏を講師としてお迎えし、「科捜研の業務内容 -DNA型鑑定を中心に-」について講演していただきます。

・日時:平成25年10月16日(水) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1 http://www.megabank.tohoku.ac.jp/info/access01.html
・演題:科捜研の業務内容 -DNA型鑑定を中心に-
・講師:平田智士(宮城県警察科学捜査研究所)

・概要:近年,匿名性の高い犯罪の出現や地域社会の崩壊により目撃者からの情報を得にくくなったこと、また、裁判員制度の導入により,刑事裁判においては,従来にも増して物的証拠の必要性が高まり,DNA型鑑定等の科学技術を活用した客観的証拠の果たす役割が大きくなってきている。再審を含め,科学的証拠の信用性や証明力が問題となる事件も少なくありません。しかも,そのような証拠の果たす役割が特に大きいのは,裁判員裁判の対象となるような重大な事件である。科学捜査の担い手は,警察庁に設置されている科学警察研究所,警視庁・道府県警察本部における科学捜査研究所や鑑識課,各警察署における鑑識係であり,犯罪捜査に携わる刑事と協力し,またはその依頼に応じて,物的証拠の追究にあたっている。 このような状況を踏まえて、科学捜査研究所の業務内容について概説し、特にDNA型鑑定について、その原理・方法等をお話ししたい。 また、東日本大震災に伴う身元確認等の警察措置についてお話したい。

・世話人:佐藤行人、長﨑正朗

 

長﨑教授:エフエムいわぬまラジオ出演のお知らせ

エフエムいわぬまの番組「みんなで健康宮城へ!」に長﨑教授が出演することになりました。

10/21・28(月)午後5時30分〜エフエムいわぬまにて放送を予定しております。
(再放送は10/25・11/1(金)午前8:30〜)

http://www.fm779.com/ (こちらからリアルタイムでお聞きいただけます。)

上記ラジオの放送後、11月下旬ごろ、東北メディカル・メガバンク機構のホームページにも掲載させていただきます。

http://www.megabank.tohoku.ac.jp/guidance/pro/20130819.html

カテゴリー: news

Fukuoka International Symposium on Genomics & Epigenomics 2013 (9月10日)

長﨑教授が九州大学で開催されるFukuoka International Symposium on Genomics & Epigenomics 2013で講演を行います。

・日時:平成25年9月10日(火)10:05-10:40
・場所:九州大学病院キャンパス 総合研究棟セミナー室105号室及びサイエンスカフェ
・演題:Towards thousands Japanese whole genome project and its data management and bioinformatics

第34回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(8月2日)

第34回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。今回は前橋工科大学・河合洋介先生を講師としてお迎えし、「天然変性タンパク質の分子進化」について講演していただきます。

・日時:平成25年8月2日(金) 17:00‐18:30
・場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1  http://www.megabank.tohoku.ac.jp/info/access01.html
・演題:天然変性タンパク質の分子進化
・講師:河合洋介(前橋工科大学)

・概要:タンパク質の中には生理的な条件下で一定の構造を作らない不規則な領域を含むものがあり、天然変性タンパク質と呼ばれている。ヒトのタンパク質の3割以上は天然変性タンパク質であると予測されており、核内に局在し転写制御やシグナル伝達に関与しているものが多い。不規則領域の中には他のタンパク質と複合体を形成しているときには構造をとっているものがある。これは不規則な状態のポリペプチド鎖がターゲット分子を認識し結合とフォールドが共役して起こるためだと考えられている。このような天然変性タンパク質の分子認識機構は構造を持つタンパク質の分子認識機構とは異なるパラダイムとして近年注目されている。天然変性タンパク質は原核生物にはほとんど存在せず不規則領域を介した分子認識は真核生物に固有のものであると考えられている。また不規則領域のアミノ酸配列の保存性は低く、中立に近い分子進化をしているようにみえる。しかし、なぜその様な部位がタンパク質間相互作用に重要な役割を果たすようになったのかについては分かっていない。本発表では特に不規則領域が関与する相互作用に着目し、これまで明らかにされてこなかった天然変性タンパク質の構造と機能と進化速度の関係に関する研究結果を紹介する。

・世話人:長﨑正朗